報告・ニュース

麦兆歴代天地人

麦兆歴代天地人

麦兆第二〇七号 秋

作品ⅠⅡ優秀句・・・・金子如泉

天賞「天皇の御言葉重し秋夕焼」・・・・・・・・・・・・・稲葉道子

句評・・今日の天皇陛下の生前退位についてマスコミやニュースは好き勝手に取り上げているが、作者は日本国民として一刀両断で想いを句にした。天皇陛下への作者の心は「重し」と「秋夕焼」に託されている。この句の余韻余情を十分に味わって欲しい秀句である。

地賞「盆棚の上にぎやかに佛たち」・・・・・・・・・・・・岸 一泉

句評・・今年も、先祖の盆供養をすることができた。日本では毎年繰り返される行事ではあるが、次世代ではどうなることであろうか。「にぎやかに佛たち」と表現することによって、臨場感を生み軽みを備えた秀句となった。

人賞「秋の日をすくひつつ揉む足の先」・・・・・・・・・・植木秀子

句評・・年を取ってくると、誰でもやっているような一動作を、やさしく素直にそのまま言いとめた。しかし、簡単なようでだれにでもこのような俳句が出来るものではない。全ての語が自然に響き合っている。ここには作者の静謐な人生の存在感がある。秀句である。

入選「身体に逃げ処なし秋の風」・・・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「長堤や私語を許さぬ虫時雨」・・・・・・・・・・・・國井泉車

入選「秋祭いづこより子の集まり来」・・・・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「酔芙蓉運よき日々の続きをり」・・・・・・・・・・・佐野小夜子

入選「月われを白骨として立たしめよ」・・・・・・・・・・西原隆一

入選「天の河確かめに行く帰省かな」・・・・・・・・・・・並木まどか

入選「露の下駄そのまま足を洗いけり」・・・・・・・・・・押味路子

入選「虫の音や子へのメールを書きなほす」・・・・・・・・山之内 清

入選「目瞑ればいつもふる里天の川」・・・・・・・・・・・鈴木美枝

入選「白萩や母送り出す介護バス」・・・・・・・・・・・・荒井イト

入選「秋の星小窓に一つ夢一つ」・・・・・・・・・・・・・小野みゆず

入選「長き夜の指に習ひて鶴折りぬ」・・・・・・・・・・・洲﨑英子

入選「去年植えし無花果実る命惜し」・・・・・・・・・・・中嶋惠美子

入選「晩秋や富士一望に亡父眠る」・・・・・・・・・・・・稲葉貴泉

入選「鶏鳴の村つつぬけに豊の秋」・・・・・・・・・・ ・飯島サヨ

入選「ほろ苦き人の世にある秋刀魚かな」・・・・・・・・・吉田 洋

入選「入相の鐘に始まる良夜かな」・・・・・・・・・・・・堀 昌平

入選「長き夜の人恋しきやラヂオ鳴る」・・・・・・・・・・西川 博

入選「天高し伊那の宿場の石畳」・・・・・・・・・・・・・山﨑明男

入選「子のあとをはぐれぬように秋の路」・・・・・・・・・高山純子

入選「秋晴やベランダに干す登山靴」・・・・・・・・・・・仲田美穂

入選「ぼろぼろの尾ひれ群なし鮭上る」・・・・・・・・・・金子辰夫

 

兼題「石榴」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「実石榴や末子恋しき鬼子母神」・・・・・・・・・國井泉車

句評・・鬼子母神・御釈迦様・末子・石榴(吉祥果)の関係は、宗教の経典の話としてありますが、ここではその話を裏に秘めながら今の世も変らぬ親子の情を詠み出している秀句である。

地賞「赤々と夕日に笑ふ石榴かな」・・・・・・・・・・川端三雄

句評・・石榴を自然の景の中に据え、その実の持つ独特な印象を、言うに言われぬ「笑ふ」という語で捉えている。「赤々と夕日」と重ねたのも「笑ふ」を更に凄味のあるものにしている秀句である。

人賞「熟れに熟れつひに秘密を割れ石榴」・・・・・・・辻 雅風

句評・・とうとうこの厳つい「石榴」が割れて実が姿をみせた。「秘密を」の語がよく効いている。「石榴」の「秘密」。そこには見てはいけないようなものを見ている、よく言えば神聖なもの、ざっくばらんに言えば人間の本性さえ感じさせるような「石榴」の「秘密である。良句である。

入選「美しき誤解石榴を齧るとき」・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「余命とはその先知らず熟れ石榴」・・・・・・・・岸 一泉

入選「たわわなる赤き石榴の黙ふかし」・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「初恋は実らぬものよ石榴食む」・・・・・・・・・山之内 清

入選「国憂う師の思ひ出や石榴の実」・・・・・・・・・鈴木美枝

入選「原始の固さ石榴の粒を噛みしめる」・・・・・・・洲﨑英子

入選「鬼子母神喰ふて哀しき石榴かな」・・・・・・・・森田正子

入選「君が言ふルビーレッドの色石榴」・・・・・・・・稲葉貴泉

 

 

 

 

 

麦兆第二一二号 冬

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

 

天賞「つひに立つ雲上伽藍冬高野」・・・・・・・・・・・原田麦秋

句評・・「つひに立つ」の単純な語に、万感の思いが広がる。紆余曲折した作者の人生の到達点とも思われ、中七下五の荘厳な仏の世界が人に安寧の時を授けてくれている秀句である。

地賞「包帯を解くや余生の寒の底」・・・・・・・・・・・國井泉車

句評・・「包帯を解く」というある意味では一般的な動作が、「余生の寒の底」と結びつくことによって、静謐なる深い慟哭が響いてくる秀句である。

人賞「誰がために命ながらふ枯木星」・・・・・・・・・・長谷川勢津子

句評・・自身の心中に収めきれない悲痛な声を一気に吐露した句である。

作者には「誰がために」の答えが出ているのであろうが、さりながら「命」の在処を「枯木星」に縋るのである。秀句である。

入選「真っすぐに立ち去る人や冬木立」・・・・・・・・・岸 一泉

入選「戦てふ文字のちらつく去年今年」・・・・・・・・・押味路子

入選「形見なる手袋母と手を繋ぐ」・・・・・・・・・・・並木まどか

入選「茶の花や脇往還の辻不動」・・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「ずんずんと夕日入れたり雪の嶺」・・・・・・・・・山之内 清

入選「紅きまま触るれば崩る冬薔薇」・・・・・・・・・・稲葉道子

入選「尊氏の像貸し出さる冬の寺」・・・・・・・・・・・佐野小夜子 ・

入選「みじろげば哀しみあふれ寒の月」・・・・・・・・・森田正子

入選「歩かれぬ身の哀しさよ木の葉降る」・・・・・・・・植木秀子

入選「こつこつと杖の近付く寒さかな」・・・・・・・・・中村進六

入選「雪やみて月に帰りぬ雪兎」・・・・・・・・・・・・洲﨑英子

入選「山眠るをりをりきこゆ鳶の笛」・・・・・・・・・・鈴木美枝

入選「時雨るるや昼も灯れる介護棟」・・・・・・・・・・飯島サヨ

入選「俳号は雅風にござる初句会」・・・・・・・・・・・辻 雅風

入選「小春日や水面に揃ふ鯉の口」・・・・・・・・・・・川端三雄

入選「八十歳以って了とす賀状かな」・・・・・・・・・・荒井イト

入選「春待つや卵を割れば黄味ふたつ」・・・・・・・・・小林久恵

※今号も、ほとんど入選に推薦したい句沢山が並びました。皆様の日常の中で句に向い合う心が伝わってきて嬉しく思います。その中でも新鮮な作者の心が働いているもの、余韻余情が広がって行くものを選句しました。

 

 

兼題「寒林」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「寒林の一切捨てし静寂かな」・・・・・・・・・・・鈴木美枝

句評・・作者が、「寒林」に対峙している姿が浮かぶ。この「静寂」は一体どこからきているのか、じっと感じている。辿り着いたのが「寒林」の纏う潔き「無」の世界ではなかったろうか。秀句である。

地賞「寒林やどこかで生るる水の音」・・・・・・・・・・・・山之内 清

句評・・落ち葉した雑木林の山であろうか。静けさの中に微かに水の音が聞こえることによって、どことなく春が近づいてくるような「寒林」の世界が広がる良句である。

人賞「寒林や陽射し突き抜けより寂し」・・・・・・・・・・・稲葉貴泉

句評・・最初は、「突き抜けしより」と、過去の助動詞「し」が脱落していて、助詞の「より」で「突き抜けてから」はないかと思ったが、やはり副詞の「更に」の意味で取ることにした。「寒々として寂しい林だなあ。そこに陽の光が突き抜けるように差して、本来ならあたたかくなるのだが、落ち葉して裸になっている木々が露わになって更に寂しさを増しているよ。」と解釈した。良句である。

入選「寒林や祈りとなりし天の青」・・・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「寒林に疎まれてをり嵯峨の墓碑」・・・・・・・・・・・國井泉車

入選「寒林にあまねく朝日差しにけり」・・・・・・・・・・・岸 一泉

入選「寒林や落人村の小さき墓」・・・・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「寒林を抜けふるさとの家並かな」・・・・・・・・・・・佐野小夜子

入選「寒林や背をまっすぐに登校す」・・・・・・・・・・・・西川 博

入選「寒林や過去のどこかで迷ってる」・・・・・・・・・・・西原隆一

入選「寒林や決して夢をあきらめず」・・・・・・・・・・・・堀 鏡子

入選「寒林や親子で応ず猿の声」・・・・・・・・・・・・・・吉田 洋

 

※兼題はいつも難しいところですね。どうしても、題の説明になってしまうことが多いようです。しかし、同じ季語で作句して一堂に会することは勉強になります。まず季語を歳時記で調べてみましょう。歳時記に載っている説明は、俳句をやっている人の共通理解とします。ですから、その説明を俳句に取り入れることは必要ありません。賞に入った前記の句は、兼題を出発点として自身の感性に合致するものを追い求めています。次の二一三号の兼題は「遍路」です。時には自分の殻を破って冒険してみるのもいいでしょう。

 

 

 

 

 

麦兆第二一号 春

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「「春日和何変らねど母はなし」・・・・・・・・・・原田麦秋

句評・・いい春の日よりだなあ。いつもと何にも変わらないけど、変わるとしたら母が居ないことだ。母を失った喪失感をこんなに淡々と詠みだした句を私は知らない。それ故に母を失った慟哭がじわじわと迫ってくる秀句である。

地賞「「花舞ひぬ今日の引力やさしかり」・・・・・・・・國井泉車

句評・・眼前の桜の散る様子を、「今日の引力やさしかり」と言いとめた。一見非科学的であるようだが、「今日の」「引力」をそう感じたのである。大自然の運行に、人間という小さな生き物が直に触れている秀句である。

人賞「「歩かねば言葉生まれぬ青き踏む」・・・・・・・・岸 一泉

句評・・具体的には句作時の青踏かもしれないが、「文字」以前の「言葉」

誕生の根源的な発見を、「青き踏む」という生命力に満ちた季語と取り合わせることによって臨場感を獲得できた秀句である。

入選「春月のしたたりに村深ねむり」・・・・・・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「花大樹満月高くかかげけり」・・・・・・・・・・・・・・稲葉道子

入選「春雷や墓の相寄る過疎の村」・・・・・・・・・・・・・・山之内 清

入選「庭先の犬撫でて行く遍路かな」・・・・・・・・・・・・・並木まどか

入選「春愁や立ちて座りて一人の座」・・・・・・・・・・・・・鈴木美枝

入選「独り言増ゆるふたりや山笑ふ」・・・・・・・・・・・・・堀 鏡子

入選「唐突に山笑ふ日となりにけり」・・・・・・・・・・・・・西川 博

入選「ロボットに恋してゐたり四月馬鹿」・・・・・・・・・・・三枝正一路

入選「旧友と共に白髪の花見哉」・・・・・・・・・・・・・・・中山子泉

入選「咲き急ぐ花に誘はれ父逝きぬ」・・・・・・・・・・・・・内山由里子

 

※今号も、入選に推薦したい句が沢山並びました。皆様の日常の中で俳句に向い合う心が伝わってきて嬉しく思います。その中でも新鮮な作者の心が働いているもの、余韻余情が広がって行くものを選句しました。一句が季語の説明にならないようにするためには、歳時記にある季語の説明を確認して下さい。その内容は、伝統的に周知のこととして句作をするようにしたいものです。

 

 

兼題「遍路」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「「お遍路のうしろ姿の暮れて行く」・・・・・・長谷川勢津子

句評・・人間の人間に対する全てを備えたほんとうにやさしい句である。秀句である。

地賞「「逆打ちの遍路海坂(うなさか)右手(めて)に置き」・・・・・・・國井泉車

句評・・「逆打ち」は、四国遍路では一番札所霊山寺からではなく、八十八番札所大窪寺から逆に回ることを言う。逆打ちすると弘法大師様に会えるという言い伝えがあるが、順打ちよりも道が険しく多くの困難を伴う為、逆打ち一回は順打ち三回の功徳やご利益があるとも言われている。「海坂」は、舟が水平線の彼方に見えなくなるのは、海に傾斜があって他界に至ると考えたからという。「右手(めて)」は、「馬手(めて)」とも書き、馬上で手綱をとるのが右手であり、「左手(ゆんで)」は、「弓手」とも書き、馬上で弓を持つのが左手であった所から読むようになった。この句は、遍路に付随していく漢字や古語を多用することによって、逆打ちの歩みの厳しさ苦しさを表現し得ている。また「見て」ではなく、「置き」の語も一心不乱に歩く姿が迫ってくる秀句である。

人賞「「眼光の生死離るる遍路かな」・・・・・・・・・中村進六

句評・・現在では、四国八十八ヵ所を徒歩で結願する人は少ない。ここでは祈願成就のために生命を賭して歩いているのである。仏に帰依した無我の境地に至っているような姿の一瞬を捉えた良句である。

入選「山河ゆく砂の器の遍路かな」・・・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「ふるさとに残りし母の遍路杖」・・・・・・・・・・・・稲葉道子

入選「海見ゆる日の穏やかな遍路かな」・・・・・・・・・・・洲﨑英子 ・

入選「御詠歌の声すきとほる遍路かな」・・・・・・・・・・・飯島サヨ

入選「許すこと忘れ去ること遍路道」・・・・・・・・・・・・小野みゆず

 

※今回、天地人に頂いた句は、兼題をしっかりと把握し、作者自身は実体験してないかも知れませんが、それぞれの日々の生活実感が裏打ちされ、五七五の文字の選択によって詩的真実まで高めていることが素晴らしいと考えます。

 

 

 

 

麦兆第二一四号 夏

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「巖頭や今日の夕焼今日かぎり」・・・・・・・・・・・國井泉車

句評・・作者は、夕焼の中にある「巖頭」を見つめており、その夕焼に、

明日は約束されていない。故に限りある夕焼の中にある、不動

の巌頭に神の如き荘厳さを見出しているのであろう。清沢満之

「独立者は常に生死巌頭に立在すべきなり。」(独立しようとす

る人は、いつでも生と死との切っ先に立って在るのがよいだろ

う)。清沢の言う人間存在への存問を、俳句という自然との一

体化によってより深く迫ってくる秀句である。

地賞「百日紅村は小さく墓多し」・・・・・・・・・・・・・岸 一泉

句評・・少子化、過疎化、消滅集落等、現在の日本は、以前は都市一極集中型であったものが現在はその都市さえも、存続が危ぶまれる現象が起きている。作者は、やさしい言葉をなだらかに使用して、その村の様子を淡々と写している。その背景に浮かび上がってくるものは、老人ばかりになってしまった村、その老人達が先祖代々の墓を守っている。しかし、その先は、その墓を守る者も少ない。村には、「百日紅」の花が、昔から変わらず紅く咲いている。秀句である。

人賞「雲の間に洗はれ出でし梅雨の月」・・・・・・・・・・長谷川勢津子

句評・・梅雨の時期の雨後の月を、実景によって活写し、美の本質を

見事に表現し得た秀句である。

入選「いま一度外に出てみる梅雨の月」・・・・・・・・・・押味路子

入選「裏山に西日のあたる故郷かな」・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「公園の午後は昭和の立葵」・・・・・・・・・・・・・・並木まどか  ・

入選「夜濯ぎも楽しからずや星降れり」・・・・・・・・・・辻 雅風

入選「薫風や大リーグに立つかの少年」・・・・・・・・・・森田正子

入選「いつの間に時代遅れとなる晩夏」・・・・・・・・・・小野みゆず

入選「初螢あとを追うては見失ふ」・・・・・・・・・・・・洲﨑英子

入選「油照り災害復興総掛かり」・・・・・・・・・・・・・三枝正一路

入選「早苗田に月を宿して村眠る」・・・・・・・・・・・・新井セツ

入選「空家から流る歳月余花の雨」・・・・・・・・・・・・内山由里子

 

※今号も、心を込めた良い句が沢山ありました。更に、出句前に次のことを再確認しましょう。①文字②切れ字③季語④文語と口語⑤韻律⑥省略

 

 

兼題「滝」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「神の威を帯びて大滝落ちにけり」・・・・・・・・・・・辻 雅風

句評・・滔々と流れ落ちる大滝に、大自然の神の威光を感じている作者は、只々その前にひれ伏して抱かれるばかりである。良句である。

地賞「はんなりと空より溢る那智の滝」・・・・・・・・・・・・佐野小夜子 入

句評・・「はんなりと」は、京言葉で落ち着いた華やかさがあるという意味で、語源は「花なり」または「花あり」とされる。「那智の滝」の特徴を見事に捉えてをり、やさしい言葉で写すことができた。特に、「はんなり」と「溢る」の語が出そうで出ない良句である。。

人賞「砕けては滝千尺の響かな」・・・・・・・・・・・・・・中村進六

句評・・日本三大瀑布の名を借りずとも、人は滝の前に立つとその神聖さに心打たれることが多い。滝は上から下に落ちるばかりであるが、一瞬たりとも同じ様を見せない。良句である。

入選「奥入瀬に小滝あまたや石(いわ)走る」・・・・・・・・・・・・・押味路子

入選「カムイ住む知床の滝海に落つ」・・・・・・・・・・・・・並木まどか

入選「雨粒はやがて瀬となり滝と落つ」・・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「千年の刻経し滝の女夫かな」・・・・・・・・・・・・・・森田正子

入選「滝飛沫浴びいつ時を憩ひけり」・・・・・・・・・・・・・新井セツ

 

※今回、天地人に頂いた句は、兼題をしっかりと把握し、五七五の文字の選択によって詩的真実まで高めていることが素晴らしいと考えます。「滝」という兼題でしたが、夏の季語「滝」そのものを詠み込んでいない句が散見されました。季語は俳句の核ともなるべきものですから、しっかりと下調べをして句作しましょう。その下調べしたものが、俳句を作る人たちの共通理解になっています。往々にして個人の浅い知識だけで作句すると季語の説明になってしまいます。

 

 

 

 

 

麦兆第二一五号 秋

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「集(すだ)く虫な鳴きそ河岸の寂しらに」・・・・・・・・・・國井泉車

句評・・「な鳴きそ」は、鳴いてくれるなという意味である。ここでいう「河岸」はどこなのであろうか。一般的には、1 川の岸。 特に、船から荷を上げ下ろしする所。2 川岸に立つ市場。特に、魚市場。3 飲食・遊びなどをする場所。4 「河岸見世」の略。河岸を変える飲食・遊びや稼ぎなどの場所を変える。まあ、3ぐらいであろうか。私にはこの他に考えている所があるが、ここでは言わない。今盛んに集まって鳴いている虫たちよ。どうか悲しんで鳴かないでおくれ。私も今宵の河岸の寂しさに耐えているのだから。秀句である。

地賞「草中に侏儒の国あり虫の声」・・・・・・・・・・・・原田麦秋

句評・・「侏儒の国」とは、日本書紀や魏志倭人伝に出てくる国の名である。小人の国とも言われる。ここではそれを踏まえていても、「こびとの国」ぐらいの意味であろう。腹這いになって草の中にいる虫の声を聴こう。そこにはこびとの国があるよ。何か人間に対してリアリティーのある秀句である。

人賞「花野より呼ばれしごとくふりかへる」・・・・・・・・岸 一泉

句評・・花野を背にして歩いていると、そこから誰かが自分を呼んでい

るようない気がする。振り返ると誰もいない。あるのは茫々と広がる花野があるばかりである。この句の背景には、麦兆の創始者金子恵泉の句集『花野』があることを、門人なら誰でも思われることであろう。しかし、それが無くともこの句は一句独立して人の感性に語りかけるものがある秀句である。

入選「おもかげの近くてとほし銀河澄む」・・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「立待や耀ふ潮のたたみくる」・・・・・・・・・・・・押味路子

入選「わか子氏に三男四女千草かな」・・・・・・・・・・・三枝正一路

入選「御仏の耳みな長し秋の声」・・・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「坐す石に陽のぬくもりや夕花野」・・・・・・・・・・飯島サヨ

入選「石段の苔削ぎ落す野分かな」・・・・・・・・・・・・山之内 清

入選「文月や病みて余白の農日誌」・・・・・・・・・・・・荒井イト

入選「いくたびも出でて愛でけり今日の月」・・・・・・・・辻 雅風

入選「何もかもかきまぜて行く秋出水」・・・・・・・・・・森田正子

入選「錠剤の手よりこぼれし秋の朝」・・・・・・・・・・・小林久恵

※今回の天地人は一見抽象的象徴的な句を選句したように見えますが、それらは期せずして、三句とも作者の中では具象的具体的であると思われます。それぞれの長い俳句の旅の一点景として辿り着いたような句でした。見たまま感じたままを素直に五七五にしたものです。

 

 

兼題「紅葉」優秀句・・・・・・・・・・・金子如泉選

天賞「父眠る富士の裾野や薄紅葉」・・・・・・・・・・・稲葉貴泉

句評・・父を慕う息子の気持ちが、淡々とした叙景表現故に残心として胸を打つ秀句である。

地賞「歓声のこだまとなりぬ山紅葉」・・・・・・・・・・田代幸子

句評・・紅葉狩りの様子が、的確な単純化によって、より自然の恵みが活かされた良句であある。

人賞「木道の靴音高し草紅葉」・・・・・・・・・・・・・山﨑明男

句評・・木道を歩く様子が、「靴音高し」と天気も良く弾む気持ちも響いてくる。また足元は一面草紅葉で染まっていて、人と自然が同化するような様子が楽しい良句である。

入選「天領や紅葉耀ふ母の郷」・・・・・・・・・・・・・國井泉車

入選「ゆきずりの村はひっそり柿紅葉」・・・・・・・・・岸 一泉

入選「登頂に鬨の声あぐ紅葉山」・・・・・・・・・・・・押味路子

入選「迫りくる雑木紅葉や木曽の谷」・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「車窓より歓声あがる紅葉坂」・・・・・・・・・・・飯島サヨ

入選「この道を歩いて帰る初紅葉」・・・・・・・・・・・西原隆一

入選「災禍痕残る城址や薄紅葉」・・・・・・・・・・・・鈴木美枝

入選「紅葉の山に囲まれ農夫哉」・・・・・・・・・・・・中山子泉

※「紅葉」という兼題を俳句にするために、色々な角度から切り込んでみたり、一歩引いて景色を詠み込んでみたりします。しかし、兼題はこうであると言った押し付けや説明がなく、句として表現されたものが結局は作者と対象が渾然一体となっているものが良いと思われます。

 

 

 

 

 

麦兆第二一六号 冬

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「灯の中に守衛の戻る霜夜かな」・・・・・・・・・・岸 一泉

句評・・作者のじっと対象を見つめる人間味あふれる心が感じられる。「灯の中に」というたんたんした動きと、「霜夜」という厳しい季語が相まって生きると言う事の意味を、ふつふつと想起させる秀句である。

地賞「水になるまでのときめき草つらら」・・・・・・・・國井泉車

句評・・「ときめき」という語は、自然の運行の一こまに命を吹き込み見事に言い得ている。「石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」(志貴皇子(しきのみこ)の歌を思い出させるが、この句は冬という季節の中に限りなく春が近いことを感じさせる。光の中にある生命の「ときめき」を直に触れている秀句である。

人賞「一瞬の影を落として鷹消ゆる」・・・・・・・・西原隆一

句評・・作者は鷹の残像に何を感じているのだろうか?猛禽の頂点に立

つ「鷹」が作者の中に何かを残していった。一瞬の邂逅と別離に作者の生き様が重なって見える秀句である。

入選「悲しみが悲しみを消し春隣」・・・・・・・・・・・・小野みゆず

入選「枯れ捻れ一本の蔓夕陽浴ぶ」・・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「薄紅の富士にほひ立つ淑気かな」・・・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「二次会に一人別るる霜夜かな」・・・・・・・・・・・押味路子

入選「もう鳴らぬ電話待つ夜の時雨かな」・・・・・・・・・稲葉道子

入選「大寒や無漏路の妻の如何ならむ」・・・・・・・・・・中村進六

入選「大方は読めぬ碑笹子鳴く」・・・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「立ち尽くす鷺の細脛冬の川」・・・・・・・・・・・・山之内 清

入選「濡れ縁に爪切る母の小春かな」・・・・・・・・・・・辻 雅風

入選「着飾りて親子三代初詣」・・・・・・・・・・・・・・深田大介

 

※今号も沢山良い句が見受けられました。それらは皆作者が出会った新鮮な感動を、自分の言葉で表現し得ている句であると言えます。表現の中で公的なものを求め過ぎると、それは説明的な句になったり理屈めいた句になったりすることが多いようです。最初の感動の中心をはずさずに、個人を活かしきることによって、結果的に誰もが感動をもって理解できる公的な句になると思われます。

 

 

兼題「芭蕉忌」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「芭蕉忌や伊賀組紐の万歩計」・・・・・・・・・・・原田麦秋

句評・・芭蕉の出身地である「伊賀」の「組紐」は「万歩計」を下げる紐になっているのだろうか。一日一万歩は現代人の健康法でもある。ちょっとした結びつきが芭蕉を想起させ旅を思わせる。秀句である。

地賞「芭蕉忌や詩才乏しく酒(ささ)すする」・・・・・・・・・・岸 一泉

句評・・芭蕉の忌日は、陽暦では1694年11月28日(陰暦では元禄七年十月十二日)であり、冬の季語となっている。古来より俳人は芭蕉を目指していることが多く、「麦兆」創始者である恵泉も生涯芭蕉を師として俳諧に励んだ。その流れを組む作者も門人たちと共にその道を辿っている。芭蕉の忌日にあって己を振り返った句である。励んだ身でなければ「詩才乏しく」などとはなかなか言えない。また、「酒」を「ササ」と読ませて古の芭蕉への挨拶とする俳味のある良句である。

人賞「芭蕉忌や荒野流るる鳶のふえ」・・・・・・・・・・鈴木美枝

句評・・俳聖と言われる「芭蕉忌」に接して、作者は現代の世を「荒野」と現したのであろうか。芭蕉への原点回帰・自然回帰を求める作者の想いが、「鳶のふえ」を回帰の象徴としているように思われる良句である。

入選「残月も過客よ芭蕉忌の出船」・・・・・・・・・・・國井泉車

入選「芭蕉忌や細道たどる異国人」・・・・・・・・・・・小野みゆず

入選「芭蕉忌やしきりにつのる旅ごころ」・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「芭蕉忌や河面たゆたし隅田川」・・・・・・・・・・吉田 洋

 

※兼題の中に入選で選びたい句が他に2句ありました。「猿山の猿に見らるる芭蕉の忌」と「案の定しぐれてきたり芭蕉の忌」です。俳味に富んだ句でした。しかし、兼題はそのままの文字を使用することが条件になっていますので、残念ながら選から外しました。また、今回「芭蕉忌」は冬の季語ですが、更に句の中に冬の季語を使用して季重なりとなっている句が散見されました。

 

 

 

 

 

麦兆第二一七号 春

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「桶深く瀬田の夢みる蜆かな」・・・・・・・・・・・押味路子

句評・・ 瀬田川の蜆は殻が厚く、身は肉厚でうまみが多いのが特徴で、ここでは砂抜きをするために一晩桶に浸けている状態。この句は桶に浸かっている蜆が真夜中に生まれ故郷瀬田の夢を見ているというのである。俳味溢れる秀句である。

の「ときめき」を直に触れている秀句である。

地賞「うららかや水底をゆく泡の影」・・・・・・・・長谷川勢津子

句評・・見たままを言葉にしたのであろうが、この一瞬を見届けた作者

の観察力と季節感と表現力は、一朝一夕で生まれるものではない。日々の精進がこの一句を生み出している。秀句である。

人賞「鬼は外そこから鬼は何処へゆく」・・・・・・・・・・稲葉貴泉

句評・・大胆に思いのままに人間世界をも取り込んでゆく表現によって、新鮮な感動と発見を読む者に与えてくれる秀句である。

「舟帰る東風の湖国の高嶺星」・・・・・・・・・・・・國井泉車

「残雪や静まりかへる木々の影」・・・・・・・・・・・岸 一泉

「没年の二文字定まる花筏」・・・・・・・・・・・・・原田麦秋

「おぼろ月人囲はるるビルの街」・・・・・・・・・・・小野みゆず

「リード引く犬の逸りや草萌ゆる」・・・・・・・・・・山之内 清

「花万朶無情の雪となりにけり」・・・・・・・・・・・鈴木美枝

「平成の御代惜しむかに残る花」・・・・・・・・・・・辻 雅風

「父母の忌の近き古里花万朶」・・・・・・・・・・・・稲葉道子

「ひとりよりふたりさみしき竹の秋」・・・・・・・・・西原隆一

「人住まぬ百年の軒燕来る」・・・・・・・・・・・・・荒井イト   ・

「余生とは何を区切りか青き踏む」・・・・・・・・・・堀 明鏡

「旧姓で呼び掛けられし花の山」・・・・・・・・・・・飯島サヨ

「残雪や主の帰らぬ登山靴」・・・・・・・・・・・・・並木まどか

「朽舟に打ち寄す波や蘆の角」・・・・・・・・・・・・堀 昌岳

「教え子の還暦となり春宴」・・・・・・・・・・・・・中山子泉

「ふるさとは母のふところすみれ咲く」・・・・・・・・吉田 洋

 

 

兼題「桜貝」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「桜貝竜宮城の一かけら」・・・・・・・・・・・吉田 洋

句評・・一片の桜貝から昔話浦島太郎の「竜宮城」を想像し、その貝がこんなにも美しいのはきっとあの乙姫様の贈り物なのだろう。読む者に夢をもたらしてくれる秀句である。

地賞地「小抽斗渚を偲ぶ桜貝」・・・・・・・・・・・・並木まどか

句評・・「小抽斗」の中に長い間ひそやかに仕舞われていた桜貝。もしくは忘れられていた桜貝。きっと桜貝はそこで毎日故郷の海を偲んでいることだろう。俳味のある秀句である。

人賞「南海に散りし人あり桜貝」・・・・・・・・・・森田正子

句評・・「南海に散りし人」とはどんな人なのだろうか。恐らく誰しもが太平洋戦争で南海の島々で戦死された人だろうと思われるのではないか。その自己犠牲の死の形見を作者は「桜貝」としたのである。秀句である。

入選「追憶の底の初恋桜貝」・・・・・・・・・・・・國井泉車

入選「桜貝少女の頃の恋淡き」・・・・・・・・・・・小野みゆず

入選「桜貝ふるさとの海蒼かりき」・・・・・・・・・山之内 清

入選「南洋の波音聞こゆ櫻貝」・・・・・・・・・・・西原隆一

入選「薄幸の君にとどけよ桜貝」・・・・・・・・・・堀 明鏡

入選「人を恋ひ初むる下げ髪桜貝」・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「海より生れし命の欠片桜貝」・・・・・・・・・洲﨑英子

入選「時刻む小瓶の中の桜貝」・・・・・・・・・・・石川菊子

入選「人麻呂の明石は凪ぎて桜貝」・・・・・・・・・三枝正一路

入選「持ち歩く母の形見の桜貝」・・・・・・・・・・松本和子

入選「桜貝遠い記憶の箱開けて」・・・・・・・・・・髙山純子

 

 

 

 

 

 

麦兆第二二〇号 冬

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「遠き日の風吹いてゐる枯野かな」・・・・・・・岸 一泉

句評・・「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る(芭蕉)」「ふりかへりふりかへり見る花野かな(恵泉)」の二句を思った。作者にとって「遠き日」とは、漠然と言っているのではなく、しんしんと懐かしき自身の根幹に繋がるような「風」の「枯野」に立っているのである。一見抽象的ではあるが秀句である。

地賞「枯るるにも力は要るか路傍草」・・・・・・・・國井泉車

句評・・一見逆転の発想の句のように見えるが、作者にとって真実なのである。「枯るるにも力」が必要であるのかという、「路傍草」への心寄せは、それを肯定する作者の深遠なこころが窺える秀句である。

人賞「こわれゆく母の虚言返り花」・・・・・・・・・長谷川勢津子 押味路子

句評・・壊れてゆく母の記憶を支えている娘の介護俳句であろうか。こ

の句評を書いている私もこの内容は他人ごとではない。「返り花」の季語は、祈りのような母を思う心が響く秀句である。

入選「文箱の己が歳月冬銀河」・・・・・・・・・・・・・押味路子

入選「柊は咲き悲しみに底あらず」・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「大根干す竿の余りに濯ぎもの」・・・・・・・・・・山之内 清

入選「芭蕉忌や山の彼方に山があり」・・・・・・・・・・西原隆一

入選「百年の軒白菜の尻を陽に」・・・・・・・・・・・・荒井イト

入選「「いい子だったね」亡き息子(こ)を賞めて燗熱し」・・・・三枝正一路

入選「着ぶくれて席ゆずり会ふ介護バス」・・・・・・・・飯島サヨ

入選「大仏の鼻こそぐりて煤払」・・・・・・・・・・・・堀 明鏡

入選「落葉焚くその楽しさとさみしさと」・・・・・・・・森田正子

入選「山眠る貧しき村をふところに」・・・・・・・・・・洲﨑英子

※今号の「一人一句推薦句」は、選句に悩む程一句一句がしっかり句作りされていて全て入選にしたい句が揃っていました。会員お一人お一人の日々の俳句への精進が伝わってきて嬉しい限りでした。

 

 

兼題「咳」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「咳の子のやうやく眠る夜明けかな」・・・・・・・・・・山之内 清

句評・・子育ての親を、素直な実感をもって表現できた良句である。

地賞「演壇の咳より始む講話かな」・・・・・・・・・・佐野小夜子

句評・・聴衆の静寂の中に、演者の「咳」が加わり、少し俳味を交えた

良句になっている。

人賞「咳ひとつこぼし靴音とほざかる」・・・・・・・・長谷川勢津子

句評・・靴音が近づいてきて、そして「咳」を一つして遠ざかっていったという場面である。余韻を活かした良句である。

入選「床の中咳おさまらぬ孤独かな」・・・・・・・・・岸 一泉

入選「点滴や咳する力弱まれり」・・・・・・・・・・・國井泉車

入選「咳すれば『だいじょうぶか』と孫の声」・・・・・三枝正一路

入選「生きている乾いた咳もその証し」・・・・・・・・稲葉貴泉

入選「咳するや婆は御手子の名医なり」・・・・・・・・塚廣 忠

※毎回、兼題は難しそうですね。しかし、一つの季題でこのようには良い句が並並びますと勉強になります。知らない季語が兼題に出ても、聞いたり見たり歳時記を調べたりして新しい世界に挑戦しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

麦兆第二二一号

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「倒れしは私なりき春の道」・・・・・・・・・・・・・原田麦秋

句評・・作者は「春の道」を歩いていて、持病か何かで倒れたのであろう。そしてそこには死を予感させるような感覚があったであろう。幽体離脱のような感覚で自身の身体を俯瞰しているのである。それは迷いの世界を超え、真理を体得したような悟りの境地にも近い。そこには人間の永遠の問いである「存問」の答えが見えてくるような世界が感じられる。春の季節が相応しい。秀句である。

地賞「国捨てし二十歳の蹉跌つばくらめ」・・・・・・・・・國井泉車

句評・・二十歳に生まれ故郷を捨ててここまで生きてきたが、その青春の「蹉跌」は、今その遥か昔を振り返ると、一種の悔恨とここまで辿り着いた人生の証しでもあるのだなあ。「つばくらめ」が南方から遥か長い道のりを越えて生まれ故郷に帰って来ているなあ。秀句である。

人賞「激(たぎ)つ瀬の泡が泡追ふ雪解川」・・・・・・・・・・・・山之内 清

句評・・しっかり現場を活写できた、明解で繊細細密な秀句である。

入選「春雷や罪あるごとく籠りをり」・・・・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「寒明けの魚影流れに押されけり」・・・・・・・・・・岸 一泉

入選「満開に咲いて散り行く桜かな」・・・・・・・・・・・中村進六

入選「海自艦ペルシャ湾へと兜太の忌」・・・・・・・・・・押味路子

入選「笑はれて笑はれて逝く花の下」・・・・・・・・・・・小野みゆず

入選「花冷えや心ひとつに都市守る」・・・・・・・・・・・並木まどか

入選「沈黙の下界照らすや春の月」・・・・・・・・・・・・鈴木美枝

入選「春祭大風呂敷の香具師(やし)の聲」・・・・・・・・・・・・森田正子

入選「不器量の小猫手元に残りをり」・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「春マスク街は見知らぬ人ばかり」・・・・・・・・・・西原隆一

入選「父植えし山桜咲く老いにけり」・・・・・・・・・・・石川菊子

入選「電工の宙に向き合ふ麦の青」・・・・・・・・・・・・荒井イト

入選「リュック負ひ老女三人花の春」・・・・・・・・・・・洲﨑英子

入選「一蹴りで春風分かつ単車かな」・・・・・・・・・・・吉田 洋

入選「求め来てすぐ袖通す春の服」・・・・・・・・・・・・中山子泉・

入選「老いといふ未知の生き様辛夷咲く」・・・・・・・・・山﨑明男・・・

入選「亡き義父の『ありがとう』の文字春惜しむ」・・・・・・・内山由里子・・・・

入選「コロナ禍や余白余白の弥生尽」・・・・・・・・・・・北原弘巳

入選「行く春やコロナウイルス国覆ふ」・・・・・・・・・・田代幸子

※恵泉の言葉から「俳句は、尤もと感ずるがよしは上、さも有べしは中、さも有るべきにやは下、さはあらじは下の下」(『金子恵泉俳句集成』より)

今号の嘱目句は、ほとんどが中以上のものばかりであった。その中でも、「不器量の小猫手元に残りをり」「求め来てすぐ袖通す春の服」が、ややこしくなくてさらりと言っていて、「ほんとにそうだよな~」っていう句でもあった。

 

 

兼題「菫」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「鳶ひとつ舞へる古墳や花菫」・・・・・・・・・・山之内 清

句評・・「鳶」「古墳」「花菫」は日本古来から存在するものである。その悠久の対象物が織りなす景をゆったりと写しだすことが出来た秀句である。

地賞「幼子にもどりし母や藍(あい)微塵(みじん)」・・・・・・・・・・堀 昌岳

句評・・誰の親でも人生の最後は、時として幼子赤子に帰っていく。作者は、幼子に戻った母親を慈しみ、またその人生を自分の人生と一緒に重ね合わせながら辿っているのだ。季語の「藍微塵」は、「勿忘草」の他に「藍染めの縞柄の布」があるので、裏にはそれも母親と結びつく懐かしいものになっているのかもしれない。良句である。

人賞「ふりむけば菫なつかし道の端」・・・・・・・・・塚廣 忠

句評・・この句の発見は「ふりむけば」である。通り過ぎて何かを見たような気がして「ふりむいた」のだ。その「道の端」には「菫」が咲いていたのだ。そのひそやかに咲いている「菫」をみつけて、おそらく自分の幼いころを「なつかしく」走馬灯のように思い出しているのだ。良句である。

入選「言葉より菫に近き車椅子」・・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「尋ね来し苔むす句碑や菫草」・・・・・・・・・・中村進六

入選「声高にすみれ咲く道登校す」・・・・・・・・・・飯島サヨ

入選「古里訪(さと)ひし母が居そうな菫かな」・・・・・・・・新井セツ

入選「菫咲くふるさと遠く墓仕舞」・・・・・・・・・・並木まどか

入選「花すみれ無人となりし里の家」・・・・・・・・・稲葉道子

入選「立ちすくむ人生の岐路すみれ草」・・・・・・・・堀 明鏡

入選「震災児はタカラジェンヌにすみれ咲く」・・・・・辻 雅風・・・

入選「夢去りて愛と謙虚のすみれ咲く」・・・・・・・・稲葉貴泉 ・

入選「無言館出でし路傍の勿忘草」・・・・・・・・・・山﨑明男

 

 

 

 

 

麦兆第二二二号 夏号

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「天と地と互ひに疲れ梅雨明くる」・・・・・・・・國井泉車

句評・・作者は、この麦兆二百二十二号を編集している最中の八月二十五日に逝去された。「天と地」となる森羅万象の今日を「互いに疲れ」と実感をもって写したのである。そしてその先に「梅雨明け」を据えて未来へのかすかな希望を添えている。秀句である。

地賞「夏草やふいに芭蕉の旅衣」・・・・・・・・・・・岸 一泉

句評・・穿った見方をすれば、この句は様々な工夫が凝らされていると言う事になるが、そんなことを一切取り払って、作者と芭蕉が直接出会っているという実感がある句だ。秀句である。

人賞「煩悩をぬらりと逃れ鰻食ふ」・・・・・・・・・・原田麦秋

句評・・少し抽象的な印象のある句のようだが、しっかり「鰻」を喰っ

ている現場が実感を持って浮かび上がってくる。秀句である。

入選「一木一草押し寄せきたる五月かな」・・・・・・・押味路子

入選「近道をえらび迷へる夕薄暮」・・・・・・・・・・長谷川勢津子

入選「ラジオより昭和の歌や明易し」・・・・・・・・・山之内 清

入選「羅や一帯一路コロナ飛ぶ」・・・・・・・・・・・中村進六

入選「蛾に一灯残し無人の駅眠る」・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「子よ生きよ妻よ生きよと虹の橋」・・・・・・・・西原隆一

入選「これよりは月に昇るか鉄線花」・・・・・・・・・並木まどか

入選「青梅のころがり落つる夕べかな」・・・・・・・・鈴木美枝

入選「コロナ収束願ふ城下の揚花火」・・・・・・・・・荒井イト

入選「梅雨籠句は真白きものより生れ」・・・・・・・・洲﨑英子

入選「二人暮らす約束ばかり秋近し」・・・・・・・・・小野みゆず

入選「新じゃがは肉じゃがとなり母となり」・・・・・・内山由里子 ・

入選「席ゆずりくれし少年夏のバス」・・・・・・・・・飯島サヨ

入選「孫ジャンプ梅雨の晴れ間の水溜り」・・・・・・・松本和子

入選「月見草一人降り立つ無人駅」・・・・・・・・・・山﨑明男

入選「鮎の香や少年の日の思川」・・・・・・・・・・・黒根秀一

 

 

兼題「香水」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「香水や飛機もパリ―も知らず老ゆ」・・・・・・・洲﨑英子

句評・・人生を振り返った時の感慨が、「香水」を起点にしてしみじみと表現できている。秀句である。

地賞「揺ぎなし森のしずくの御香水」・・・・・・・・・塚廣 忠

句評・・「御香宮(ごこうのみや)神社(じんじゃ)」は、京都伏見区にある神社であるが、そこから湧き出た水は「御香水」と呼ばれ平安時代から名水として世に知られている。日本の「揺ぎな」き神への敬いと自然の恵みを表した秀句である。

人賞「四面楚歌香水の名はエゴイスト」・・・・・・・・西原隆一

句評・・「四面楚歌」と「エゴイスト」を取り合わせただけの句であるが、両者の因果関係を連想させ、更にその裏に高価な香水の名を合わせることで孤高の人生観のようなものも漂わせている。良句である。

入選「香水を秘め事となし美少年」・・・・・・・・・・原田麦秋

入選「香水の残り香のせてバスゆけり」・・・・・・・・押味路子

入選「香水のほのかな媼ミニ句会」・・・・・・・・・・荒井イト

入選「結局はつけずに鎮座香水瓶」・・・・・・・・・・堀 明鏡

入選「面影はおぼろとなりて香水瓶」・・・・・・・・・森田正子

入選「農に嫁し香水使はず老いにけり」・・・・・・・・新井セツ

入選「姉逝きて香水瓶にまだ少し」・・・・・・・・・・三浦紀元 ・

入選「日本晴れ息子(こ)の香水を少し付け」・・・・・・・・髙山純子

 

 

 

 

 

 

麦兆第二二三号 秋

嘱目句優秀句・・・・金子如泉

天賞「秋風をひらりと越えし烏かな」・・・・・・・岸 一泉

句評・・墨絵のような構図の中に、烏の飛ぶ様を見事に言い尽くした秀句である。

地賞「鰯雲旅は帰るにあらざりし」・・・・・・・・原田麦秋

句評・・詞書に「泉車追悼」とあるので、この句は一層深く響いてくる。「旅」の定義はいろいろあるが、作者はこの句を詠むことによって、永遠の別離を泉車にそして自分に言い聞かせている秀句である。

人賞「秋の月ボクノタマシイヲヒロッテ」・・・・・西原隆一

句評・・カタカナの話し言葉という新鮮な表現で、AI時代を象徴的に

掬いあげてきた秀句である。

ている現場が実感を持って浮かび上がってくる。秀句である。

入選「葺き終へて祝ふ裁ち蕎麦山の秋」・・・・・・押味路子

入選「「村を出るための橋ありきりぎりす」・・・・・堀 昌岳

入選「闘病のはてのやすらぎ天の川」・・・・・・・長谷川勢津子

入選「流れゆく雲の早さや牧閉ざす」・・・・・・・山之内 清

入選「軽トラの四台並ぶ豊の秋」・・・・・・・・・堀 明鏡

入選「また一人村を出るらし曼殊沙華」・・・・・・辻 雅風

入選「栗を食むただそれだけで嬉しくて」・・・・・稲葉道子

入選「晩秋の雲一つなき友の葬」・・・・・・・・・荒井イト

入選「母が居て今がある身の夜食哉」・・・・・・・・・中山子泉  ・

入選「神無月今日も五十路の孤児眠る」・・・・・・吉田 洋

入選「縁側はコスモス日和爪を切る」・・・・・・・・北原弘巳

入選「逝く面の菊に遊べり友童女」・・・・・・・・・滝日薫璃

入選「鈴虫の声かすかなる破れ羽」・・・・・・・・・奥富洋平

入選「紅葉狩り三百段を上り切る」・・・・・・・・・深田大介

入選「コンテナの犇く線路秋暑し」・・・・・・・・・戸﨑清美

 

 

兼題「相撲」優秀句・・・・・金子如泉選

天賞「寄り倒し手を差し伸べる勝相撲」・・・・・・・・山之内 清

句評・・国技である相撲の歴史は、古事記の中の「国ゆずり神話」まで遡ることができ、日本の神事的伝統文化とも言える。その心技体の大切な一面を敗者への礼を尽くすことで表現できた秀句である。

地賞「コロナ禍や天覧相撲(すまひ)なく柝の音」・・・・・・・・押味路子

句評・・「コロナ禍」の語は、定着していると思われるので後世でも理解できるであろう。「天覧相撲」が中止になり、この困難な状況の中で「柝の音」(拍子木の音)を響かせ世の安寧を祈っているという良句である。

人賞「元序二段破れ湧き立つ村相撲」・・・・・・・・・辻 雅風

句評・・「元序二段」の相撲取りが、素人に負けたという場面を、的確な語彙力で活写している良句である。

入選「新入りの散切り頭前相撲・・・・・・・・・・・堀 昌岳

入選「新しき四股名も見えて大相撲」・・・・・・・・・稲葉道子

入選「廃校の跡懐かしき草相撲」・・・・・・・・・・・中村進六

入選「髪結へぬ力士の背ナの湯気しきり」・・・・・・・三浦紀元

入選「コロナ禍を鎮める祈り相撲哉」・・・・・・・・・中山子泉

入選「子らよりも親の声援草相撲」・・・・・・・・・・森田正子

入選「笛の音に始まる子供相撲かな」・・・・・・・・・塚廣 忠

入選「睨み合ひ机をたたき紙相撲」・・・・・・・・・・山﨑明男

 

 

 

 

 

 

 

 

東京支部十月例句会報告(平成25年)[岸一泉]

日時: 平成25年10月12日(土)

場所: 杉並会館

参加者: 13名


兼題句【やや寒】:

主宰選 互選 作者

スーパーの冷凍売場やや寒し 塩原正喜
やや寒や一人世帯のあと廻し 石川菊子

やや寒やひょいと朝刊とりに出ず 長谷川勢津子
西空へ月移りけりそぞろ寒 川端三雄
やや寒しまさぐる掛布うたた根て 田口君枝

 
やや寒に金木犀の匂立ち 岡田寛
  やや寒や痩せし歯茎に麻酔針 押味路子
やや寒や何時になるのか異状気象 中山子泉
やや寒や灯りて低き村の軒 岸一泉
やや寒の晩に気の付く耳毛かな 吉田洋

宵寝して薄きショールのやや寒し 並木まどか

やや寒の野に落日の力なく 佐藤篤司

やや寒や犬が引きたる綱の張り 並木まどか

 

栃木支部十月例句会報告(平成25年)[荒井イト]

日時: 平成25年10月6日(日)

場所: 喜連川公民館

参加者: 9名


兼題句【秋海棠】:

主宰選 互選 作者
古寺や雨後あざやかな秋海棠 佐野小夜子
ゆらゆらと水もに映る秋海棠 井上恵子
裏手より気軽に出入り秋海棠 荒井イト
母の忌の供花に添へたる秋海棠 鈴木美枝
ねこ車押し行く先に秋海棠 小野みゆず
あかつきの風清々し秋海棠 飯島サヨ
風去りぬ秋海棠の穏やかに 野沢政江
木もれ日や秋海棠の紅映えて 新井セツ
秋海棠爪染めし友は施設入り 植木かつ

 

東京支部九月例句会報告(平成25年)[岸一泉]

日時: 平成25年9月14日(土)

場所: 杉並会館

参加者: 11名


兼題句【耳】:

主宰選 互選 作者
虫の音に耳かたむける良き日かな 並木まどか
耳近く猫に秋夜の留守を告げ 田口君枝
耳悪くすれ違う声秋暑し  中山子泉 
耳すまし聴くひぐらしに想ふ残生  佐藤篤司 
暗がりへ耳かしぐればちちろ虫  塩原正喜 
初月や仏の耳の時代の色 川端三雄 
  秋yららまどろむ猫の聡き耳 長谷川勢津子 
束ね髪うなじ爽やか耳飾り  押見路子 
はかなくも耳にいやしの虫の声  岡田寛 
秋団扇耳に音して夢心地  石川菊子 
色白は耳まで白し秋祭  吉田洋 

 

栃木支部九月例句会報告(平成25年)[荒井イト]

日時: 平成25年9月1日(日)

場所: 喜連川公民館

参加者: 14名


兼題句【女郎花】:

主宰選 互選 作者
  朝取りの野菜と並ぶ女郎花 井上恵子
鏡中に潜む怜悧や女郎花 中村進六

忘れ物しているような女郎花 小野みゆず
若き日や野山に摘みし女郎花 鈴木美枝
ひと昔の愚痴を聞きをり女郎花 荒井イト
訪いし家の門辺明るし女郎花 新井セツ
念仏のリズムに乗れり女郎花 佐野小夜子
をりをりにいとほしむ身や女郎花 中村敏子
両の手につかぬ供えむ女郎花 長谷川勢津子
手作りの遺愛の杖や女郎花 飯島サヨ
盆踊り一枚に深めし女郎花 秋元武夫
おみなえしかそけき花をみ佛に 植木かつ
故里はあの山のえあ果て女郎花 金子如泉
風荒き野や女郎花しなやかに 野沢政江

 

平成25年度 麦兆社 後期吟行会(佐野小夜子)

日時: 平成25年11月2日(土) - 3日(日)

場所: 栃木県鬼怒川温泉(ホテルニューさくら)

参加者: 15名


持参句:

主宰選 互選 作者
眠り児の手から溢るる赤のまま 井上恵子
  車停めしばし花火を眺めけり 稲葉貴泉

瓶に挿す野菊少女の昔振り 金子如泉
[人]

山寺の日暮れは早し赤のまま

岸一泉


里閑か墨絵のような十三夜 新井セツ
[天] 一等の通知届くや今年米 荒井イト
[地] 被災地に続く空なり今日の月 稲葉道子

亡き人に聴くすべもなし秋の風

鈴木美枝
庭下駄の鼻緒のゆるびそぞろ寒 長谷川勢津子
朝雨のほどよきしめり大根まく 飯島サヨ
  徘徊す狼犬や月明かり 小野みゆず
  小枝影釣瓶落しや西の窓 石川菊子
  秋灯下孫の可愛い鏡文字

並木まどか

 入 天辺へひたすら登る蔦紅葉

佐野小夜子

  十五夜を漫ろ歩きの畑道

中山子泉

 

東京支部八月例句会報告(平成25年)[岸一泉]

日時: 平成25年8月10日(土)

場所: 杉並会館

参加者: 12名


兼題句【星月夜】:

主宰選 互選 作者
星月夜還らぬ兄の呼ぶ声が 田口君枝
しまぐにの空をあまさず星月夜 塩原正喜

熟睡児の夢にあそべる星月夜 長谷川勢津子
歌舞伎跳ね人の流れや星月夜 川端三雄
対岸の灯は佐渡という星月夜 佐藤篤司
今日の日を我と語らむ星月夜 岡田寛
ついに見た空のパノラマ星月夜 中山子泉

寝静まる山のホテルや星月夜 岸一泉
水汲みてこぼす水車や星月夜 押味路子
星月夜銜えたばこのほろ苦き 吉田洋
  最終便見送りてみる星月夜 並木まどか
  星月夜大地に眠るアボリジニ 金子如泉

 

平成25年度 麦兆社 前期吟行会 [岸 一泉]

日時: 平成25年7月13日(土)?14日(日)

ところ: 茨城県結城市

参加者:   名

兼題句: [草むしり]

主宰選 互選 作者

悪童の句碑へ語りて草むしり 新井セツ
  草むしりも趣味の一つよ空の碧 荒井イト
 入 晩年の母よ日暮れは草むしり 小野みゆず

日の影にうつりうつりて草むしり 佐野小夜子

草むしり朝陽仰ぎて目をそばめ 稲葉貴泉
[入] 道筋をせめて通さむ草むしり 下津昭寛
  草むしり手慣れし人の後を追ひ 稲葉道子
[地]

草むしり薬岳の水の甘露かな

國井泉車

ちょんの間が大事になる草むしり 金子如泉
草むしり大地の生命逞しく 岡田寛
入  毎年の戦いとなる草むしり 中山子泉
  頬かむりしてひっそりと草むしり 岸一泉
  草むしり蚊によりつかれ気もそぞろ

石川菊子

 入 老いの手やあした夕べの草むしり

長谷川勢津子

[天]  11 草むしりいつか無心になりゐたり

洲崎英子