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主宰俳句

 

「春の雲」      金子如泉

2016,4

渡らざる郷愁の橋春の雲
春の雲故郷への橋を渡るまじ
紅梅を盗み絵を書く一人の夜
東風吹くや音沙汰のなき娘の暮らし
紀元節国家論なぞ埒もなき
何故にしみじみと見き春の花
残雪やけふ訪ねたき友のあり
東風吹くや主顔せし犬の髭
犬ふぐりけふすることは何も無し
野蒜摘む粗方切れてしまひけり
草青む犬が定めし尿どころ
菜の花を好きに摘めとや掲示板
迷ひ人捜す放送木瓜の花
蜆釣り家には誰も居らざりき
桜貝呉れたる女忘れけり
桜鯛いかにも目鼻くすぐりぬ
春疾風獣が走る汚染地区
安吾忌や國七十年の息を吐く
安吾忌や國果つるとも父母の恩
春障子病む床に陽のうつりけり
四方拝天皇様を見たことある
春深雪鉢の帽子を取ってやろ
梅祭人に慣れたる山羊の声
飼ひ犬のほめられてゐる花の下
豆腐屋のおまけはおから春の風
長閑さや手つなぐ老いの影遠し
花曇音無く高く戦闘機
初燕見しより友を訪ねけり
犬とゐて蛙鳴き出し聞き入りぬ

六月七日(日)~ 十一日(木)岐阜、紀伊半島への旅

悪童の泳ぎ出しける大河かな
老鶯や俳友とゆく長良川
友と食ふ今生旨き鰻丼
耳遠き婆口無しの花盛り
初夏の家友が飼ひたる猫二匹
黒潮の間近に涼し露天風呂
青潮に濡れて海辺の鮪丼
青潮や小島へ渡る舟灯り
海に出づ熊野古道や梅雨時雨
紫陽花や古刹への道幾曲り
古道涼し那智黒飴を頬張りて
一条の滝浪々と熊野かな
梅雨しとどゆく船遅々と熊野灘
青潮や大うつぼ手に語る過去
梅雨寒や黒潮さしてくる苫屋
梅雨寒や海を背にして仕掛け編む
梅雨の海羹(あつもの)許す昨日今日
餌を欲りて海豚哭くなり熊野灘
熊野灘イルカ大ジャンプして拍手
真っ白なイルカは奇形青葉潮
梅雨しとど鯨か船か熊野灘
青潮の宙天にあり露天風呂
画家けふも青潮を聞く巌かな
補陀落の謂れ尊し梅雨の海
旅三日梅雨晴となる熊野かな
迸る水夏花のゆれかすか
楠大樹青潮はるか寄せゐたり
落つるより暴るる川か那智の滝
梅雨晴や熊野を出でて恋話
小さき花咲かせ古道の清水かな
友と昼寝熊野に沿ひし車窓かな
護摩の火を焚くや霧割る那智の滝
熊楠の住みしとふ庵梅熟す
熊楠の仮寝の跡や苔の花
梅雨しとど沖に影見るくじら浜
鰹喰ふ泳ぐ運命と知りながら

「冬の富士」 金子如泉

2016、冬

正月や目出たき事をのみ思ふ
鳴き続く冬蟋蟀や亡母の庭
蕎麦打ちに名人もいて冬の村
蕎麦掻きや村一面の雪景色
冬の別れ弟鳴らしゆくクラクション
友が家に枇杷の花咲く懐かしき
冬薔薇の一輪最後まで開く
一本の煙草に埋む寒さかな
冬の笠間買ひそこねたる稲荷ずし
道問へば犬の吠えつく冬の畑
辿り来し祖が城址の冬日かな
母と来し海沿ひを行く冬の旅
茅の輪綯ふ漢三人冬の宮
剣聖の一振りに座す冬の宮
木枯しや角振り立つる神の鹿
寂しさに冬鳥鳴かす電子辞書
星といふ季語持たぬ民冬の星
星の名を持たぬ我が祖や冬銀河
只人は只人であり枯野星
大振りの湯飲みは妻へ冬の旅
正月や故郷の風の吹く窓辺
授業中生徒らが見てゐる冬の富士
母恋ふや翌檜に雪ちらつきし
寒月や手を振り合ひて子ら帰る
冬山河「雲と水と」は母が日記
遥かなる先祖を辿る冬の道
芭蕉句碑一つ残せる冬の旅
冬の音一つになりて寝ねにけり
師が着きし句境は何処冬の富士
勇魚捕り梅雨に隠るる狼煙山
賽銭の薄きを侘ぶる梅雨の寺
明日までの旅鰻丼の喰ひ納め

如泉句集

麦兆主宰・金子如泉の句をご紹介します。
会員の方はコメントなど自由にお書きください。
50 句あります。
種別 季語 主宰句 コメント
麦兆同人 遠蛙[夏] 読み返す 父の日記や 遠蛙 0
麦兆同人 月光[秋] 月光へ 鯉ひるがえる 水の面 0
麦兆181号 春眠[春] 春眠や 十三億土 黄砂降る 0
麦兆181号 蛙鳴き[春] 蛙鳴き 子等寝て明日は 雨ならむ 0
麦兆181号 木々芽[春] 嬉々として 山の子となり 木々芽吹く 0
麦兆181号 踏青[春] 踏青や 遥かに聞こゆ 父母の声 0
麦兆181号 桜[春] 桜さくら サクラ中なる 鹿踊り 0
麦兆181号 痩蛙[春] 痩蛙 ひらひら浮かび 泳ぎ出す 0
麦兆181号 花の下[春] 呑んぺいの 俄か万歳 花の下 0
麦兆181号 草萌ゆる[春] 玉堂の 筆の走りや 草萌ゆる 0
麦兆181号 春雪[春] 春雪や 大ごととなる 庭の木々 0
麦兆181号 卒業[春] 一礼は 深し卒業 証書授与 0
麦兆181号 春一番[春] 春一番 流されてゆく 街鴉 0
麦兆180号 雪[冬] おらけふも 明日も旅ぞ 雪のかさ 0
麦兆180号 年の暮[冬] 過ぐる街 いづこも寂し 年の暮 0
麦兆180号 冬の窯[冬] 陶工の 一途の彩や 冬の窯 0
麦兆180号 短日[冬] 短日や 黄瀬戸黒瀬戸 窯巡り 0
麦兆180号 冬日[冬] 山越えて 美濃の国原 冬日射す 0
麦兆180号 冬の宿[冬] 益荒男の 鼾高らか 冬の宿 0
麦兆180号 冬[冬] 木賃宿 入るやたちまち 冬の句座 0
麦兆180号 雪国[冬] 雪国の 店早々と 終ひけり 0
麦兆180号 一時雨[冬] 一時雨 大正村に 軒借りし 0
麦兆180号 寒月[冬] 寒月を かかげ寂しや 古戦場 0
麦兆180号 寒月[冬] 杉の秀を 出で寒月は 天を占む 0
麦兆180号 寒月下[冬] 寒月下 少年は焼き 栗を売り 0
麦兆180号 雪玉[冬] 雪玉を 湯舟に浮かべ 露天風呂 0
麦兆180号 雪重ね[冬] 雪重ね 山懐の 温泉かな 0
麦兆180号 冬ぬくし[冬] 冬ぬくし 友が国なる 鰻丼 0
麦兆180号 冬の富士[冬] 玲瓏と 天地を統ぶや 冬の富士 0
麦兆180号 大歳[冬] 大歳や 玻璃の都を 旅立ちて 0
麦兆180号 冬日和[冬] 生きること 少し慣れたる 冬日和 0
麦兆180号 雑煮[冬] 雑煮喰って 誰に手合わす 独りきり 0
麦兆180号 寒月下[冬] 寒月下 自己殺人と 人言へり 0
麦兆180号 雪の花[冬] 幸ひを 等分できず 雪の花 0
麦兆180号 寒椿[冬] 捨てたのか 捨てられたのか 寒椿 0
麦兆180号 冬の天[冬] 蜘蛛の糸 幾千昇る 冬の天 0
麦兆180号 冬の蝿[冬] 逝く人に ついてゆきけり 冬の蝿 0
麦兆180号 冬陽[冬] 死の淵を 這い上がり来る 冬陽かな 0
麦兆180号 木枯[冬] 名を呼べば 木枯が声 攫ひけり 0
麦兆180号 冬林檎[冬] 冬林檎 齧り地球の 塵となる 0
麦兆166号 晩夏光[夏] 晩夏光 出船は天へ 昇りゆく 0
麦兆166号 晩夏[夏] 山頂に 立てば晩夏の 沖高し 0
麦兆166号 晩夏[夏] 故郷まで たどりつかざる 晩夏かな 0
麦兆166号 夏の雲[夏] 先生に 叱られしこと 夏の雲 0
麦兆166号 炎暑[夏] 子が父を 葬り偲び 泣く炎暑 0
麦兆166号 蝉時雨[夏] 蝉時雨 親なき家の 閉ざされて 0
麦兆166号 ツバメ[夏] 諦めぬ 鴉ぞ憎き ツバメの巣 0
麦兆166号 長梅雨[夏] 長梅雨や 上目使ひの 犬の顔 0
麦兆166号 父の日[夏] 父の日や 己が貧窮 問答歌 0
麦兆166号 若葉光[夏] 若葉光 亡き父母の 笑ひ顔 0